【トランプ氏勝利】経済政策に期待 株式市場は最高値更新 財政悪化や物価上昇への懸念も

 【ワシントン=小雲規生】米共和党のドナルド・トランプ氏の大統領選勝利後、米国の金融市場はトランプ氏が公約する企業活動を後押しする経済政策への期待が高まっている。株式市場は過去最高値を相次いで更新しており、経済成長への期待からドル高も進んでいる。一方、トランプ氏の勝利は財政悪化や物価上昇への懸念も呼び起こしており、長期金利は上昇基調をたどっている。

 大統領選が投開票された8日はトランプ氏の優勢が伝えられるなか、先物市場で株安が進む「トランプ・ショック」に見舞われた。しかし9日未明のトランプ氏の勝利演説が落ち着いた内容だったことから投資家心理は回復。不動産王であるトランプ氏が打ち出す大型公共投資が景気を後押しするとの期待が広がった。

 14日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は3営業日連続で過去最高値を更新。8日終値との比較では約536ドル(約2.9%)上昇した。また投資家のリスク志向が高まったことで、安定資産とみなされる円を売ってドルを買う動きも進み、14日には約5カ月ぶりの円安ドル高水準をつけた。

 ただしトランプ氏が打ち出す公共投資の財源は明確ではなく、市場では「米国の財政状態の悪化が進む」との懸念もある。また失業率が低いなかでの景気刺激策は賃金の上昇を通じてインフレを招きかねない。このため債券市場では米国債が売られ、14日の長期金利は一時2.30%まで上がり、約10カ月半ぶりの水準となった。長期金利上昇が続けば企業の資金調達コストが高まり、経済活動の足かせになる可能性もある。

 大統領選後の金融市場はトランプ氏への「期待」で盛り上がっているのが実態。市場関係者の間では「何かのきっかけで期待がしぼめば、トランプ氏の負の側面に注目が集まって相場は逆に動き出す」との指摘も出ている。