「米保護主義」加速の危うさ 篠原尚之・前IMF副専務理事 (2/2ページ)

2016.11.12 05:00


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 ◆世界貿易を下押し

 米国が内向きになることで、英国の欧州連合(EU)離脱や欧州での移民制限などの保護主義的な動きが強まることに懸念を抱く。世界経済が低成長にあえぐ中で、どこの国民も余裕がなくなってきている。

 数年前までは国内総生産(GDP)より大きく増加していた世界の貿易量が大きく落ち込んできているのも、各国の保護主義的な政策の影響があるからだ。

 米国の保護主義が加速すれば、世界の貿易や経済の拡大にとってマイナスである。NAFTAはともかく、米国では不公正な貿易取引への監視(アンチ・ダンピング課税など)が強まるだろう。貿易相手国による、輸出拡大のための通貨安操作に対する監視の目も厳しくなろう。

 トランプ氏の経済政策は予見しにくい部分が多いが、短期的には景気刺激的になる可能性が高いと見る。一方、保護主義的な主張がどう政策に反映されていくのか、十分な注意が必要であろう。

 市場は、今後トランプ氏が、こうした経済政策を含めさまざまな政策を具体的にどう展開していくのかを注視していくことになる。当面、閣僚など次期政権の中核メンバーがどんな顔触れになるかが重要だ。

 また、トランプ氏と議会共和党の望む政策は同じではなく、どう折り合いをつけていくかにも注目している。こうしたことから市場はしばらくは、政治リスクを意識した神経質な動きが続くだろう。

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【プロフィル】篠原尚之

 しのはら・なおゆき 1953年甲府市生まれ。東大卒業後、大蔵省(現財務省)入省。米プリンストン大修士課程修了。同省国際局長、財務官、IMF副専務理事を経て昨年から東大教授。

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