「今回の新しい枠組みの内容については、その趣旨や効果をよく理解してもらうよう努めていきたい」
21日、金融政策決定会合後の記者会見に臨んだ日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁はこう語り、「市場との対話」を強化する考えを強調した。
市場はこれまで、黒田日銀の「サプライズ(驚き)戦略」に翻弄されてきた。最たるものが1月のマイナス金利政策の導入決定だ。黒田総裁は直前まで否定的だったにもかかわらず、前触れもなく導入を決定。市場や収益が圧迫される金融機関からは不満が噴出した。せっかく切った強力な緩和カードだったが、世界的なリスク回避の荒波もあり、急激な円高を阻止できなかった。
それを踏まえて日銀は、今回、市場との対話を重視する姿勢に転じた。8月から9月にかけて黒田総裁や中曽宏副総裁ら決定会合メンバーが次々と講演などを行い、市場に総括的な検証や金融政策の枠組み修正の方向性が織り込まれていったのは間違いない。
日本証券業協会の稲野和利会長は「市場との対話を促進していこうという姿勢がみえる」と日銀を評価する。