「愛国」に縛られる中国指導部のジレンマ スマホで強くなった市民の意思 (2/5ページ)

講演するエズラ・ボーゲル・ハーバード大名誉教授。ベストセラー「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の著者としても知られる=7月28日、大阪市北区、大阪大学中之島センター
講演するエズラ・ボーゲル・ハーバード大名誉教授。ベストセラー「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の著者としても知られる=7月28日、大阪市北区、大阪大学中之島センター【拡大】

  • 討議に参加するエズラ・ボーゲル氏(右から3人目)と星野俊也氏(同4人目)=7月28日、大阪大学中之島センター

 ボーゲル氏によると、19世紀半ば以降、日本が近代化を成功させて中国を追い越していくなかで、多くの中国人が不満を抱いた。しかし近年の急成長によってようやく、見返すことができる立場を得たという。このため、「われわれは強い」との自尊心の表出を願う国民感情が形成されたという。

 こうした感情は、政策によって人為的につくり出された部分もある。それが愛国教育だという。

 「天安門事件のあと中国の指導者たちは、不満が自分たちに向かうことを恐れ、心配した。そのため愛国教育に頼った」

 民主党政権の不手際

 格好の標的になったのが日本だった。「非常にうまい宣伝だった。第二次大戦中の日中の戦いを扱ったテレビドラマなどが次々とつくられ、日本に対する国民感情は悪くなった」

 愛国教育への依存度を強める習近平国家主席について、●(=登におおざと)小平と全く違う背景にも触れた。フランス留学に加え北京での政治経験が豊富で軍にもにらみが利いた●(=登におおざと)小平に比べ、習氏は長く地方でキャリアを積んだ。

「国内向けに力を示すためにも、ポーズを取らなければいけないこともある」