政府が24日閣議決定した2016年度第2次補正予算案は、建設国債の発行で一般会計歳入の8割超を賄った。財政健全化の取り組みが遅れる恐れがあるうえ、歳出に盛り込まれた公共事業や現金給付による景気押し上げ効果は一時的に終わる懸念もある。政府が国債増発に踏み切らざるを得なかったのは、世界経済の減速や円高で企業収益が減少し、税収の伸びが頭打ちになったためだ。安倍晋三政権はこれまでの補正予算で、税収増を背景に国債発行を抑制してきたが、大幅な税収の上振れは見込みにくくなっている。
麻生太郎財務相は24日の臨時閣議後の会見で、基礎的財政収支を20年度に黒字化する目標について、「方向を変えているわけではない」と強調した。ただ、与党などの歳出圧力は強く、ひとたび財政規律が緩めば、財政健全化の取り組みが遅れかねない。
一方、「未来への投資を実現する」(麻生氏)今回の補正予算だが、財源を建設国債に頼ったことで公共事業が目立った。人手不足の現状では景気押し上げ効果は限定的になる可能性があるうえ、事業が実施された後にはその反動で「景気を冷え込ませる効果も強くなる」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)との声も根強い。
景気は個人消費が力強さを欠く状況が続き、低所得者向けの現金給付も一時的な景気刺激で終わる懸念も少なくない。世界経済は先行きが見通しにくく、景気を下支えする経済対策は不可欠。老朽化インフラの更新や防災など必要な公共事業もある。ただ、首相が強調する「民需主導の持続的な成長」の実現には、公共事業だけでなく、設備投資や消費を活性化させる構造改革を着実に実施することも欠かせない。(中村智隆)