日本貿易振興機構(ジェトロ)が10日までに発表した2016年版の世界貿易投資報告によると、15年の世界貿易額(輸出ベース)は推計で前年比12.7%減の16兆4467億ドル(約1670兆円)となり、6年ぶりに縮小に転じた。中国経済の不振が影響したほか、各国企業の現地生産進展も貿易が伸びにくくなった背景にある。
世界では、15年以降に日本とオーストラリア、中国と韓国など14件の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)が発効したが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をはじめ大型のFTA発効が遅れていることも貿易停滞の一因となった。
国別では、中国は景気減速に加え、工業製品の内製化が進み輸入が18.4%減となった。ジェトロの石毛博行理事長は「中国の供給力が上がっている」と指摘し、対中輸出が伸びない理由として中国の生産力増強を挙げた。
また日本の輸入は20.7%減、輸出は10.0%減だった。日米欧などの企業は、需要がある海外現地での生産体制を既に築き上げており、自国からの輸出が増えにくい構図になっている。
分野別では、価格が下落した原油が45.4%減と大きく落ち込んだ。鉱山・建設機械や工作機械など一般機械が9.7%減。ジェトロの担当者は「中国で製造業向けの生産用機械や部品の輸入が減っていることが大きい」と分析した。
世界経済の約67%を占める主要22カ国・地域の16年1~3月期の輸出額は前年同期比8.4%減となり、低迷が続いている。
世界のFTA発効件数は6月末時点で282件となった。最近では、日本とモンゴル、韓国とニュージーランドの協定も発効した。