英国の欧州連合(EU)離脱問題による悪影響が改めて懸念され、金融市場が再び動揺している。投資家がリスクを回避する動きを強め、比較的安全な資産とされる円や国債に投資マネーが流れ込む一方、リスク資産の株式は売られた。先週以降、小康状態を保っていた市場で、「二番底」の恐れが現実味を帯びてきた。(森田晶宏)
「英国の国民投票で離脱派が勝利した6月24日に急激な円高・株安が進み、最近は巻き戻しの動きが続いてきたが、相場にはそれ以上の力はなかった」。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストはこう落胆する。
動揺再燃の引き金は、英国の不動産市況が悪化し、関連ファンドの取引停止が相次いだことだ。時を同じくして、イタリアの銀行の不良債権問題で金融不安への警戒感が高まり、投資家の心理を冷やした。
市川氏は「欧州発の材料に敏感に反応している」と指摘。不動産市況の悪化に限らず、今後も英国発で新たな悪影響が表面化するたび、株や為替の値動きが激しくなる公算が大きい。
また、東京市場にとって大きな逆風となっているのが、英通貨ポンドの急落に伴う円高圧力だ。ポンドが売り込まれれば、連鎖的に安全通貨の円が買われ、円高が進行。それに伴う企業業績の悪化を懸念し、株安につながるためだ。
ポンドは6日、対ドルで1ポンド=1.3ドル、対円で1ポンド=130円の節目をそれぞれ一時割り込み、直近の安値を更新した。英当局は自国の輸出増につながるポンド安を容認する姿勢との観測から、ポンドはさらに下落するとの見方が強い。
みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは「ポンドは対ドルで1ポンド=1.15ドル、対円で1ポンド=120円割れまで下落する余地がある」とし、「ポンド安を通じた円高圧力には注意が必要だ」と話した。