前提としてミラノとイタリアの他都市の位置づけが変化してきたことがある。
イタリアの都市はそれぞれに個性が強いが、10数年前と比較してミラノは国際都市としてのポジションが強くなった。「イタリア全般では何とも言えないが、グローバル市場で受けることがミラノなら受ける」と感じる人が増えている。それもミラノの人だけでなくミラノ以外の地方都市の人も、以前のように対抗心をむき出しにするのではなく、ミラノを特別視するようになったのだ。
次にミラノの伝統的なバールの崩壊がある。特に市中心部のバールが後払いではなく前払いシステムを採用し、ヘルシーなヨーグルトを置いたりする。それだけでない。かつてバールはサッカーと政治の議論をする世代を超えたソーシャルな場であった。その性格が急激に消滅しつつある。
3番目にスローフードやバイオ食品を重視するトレンドにあった飲食店の増加がくる。ワインを呑むエノテカも「オヤジの立ち飲み屋」ではない。各地方の拘りのサラミやチーズも提供する、味と健康に煩い連中の溜まり場になっている。従来のカテゴリーの再編成が進行中である表れと認識してよい。
4番目はWi-Fi環境とコワーキングスペースの普及であり、そこを拠点に仕事をすることが当たり前になってきたことだ。コワーキングスペースであるインパクト・ハブと、その近くにあるカフェにはまったく同じタイプの人たちが集まり、同じようなスタイルの仕事の仕方をしている。