しかしグラフで為替が115円以上の区間だけで見るならば、ドル円の1円の変化は日経平均約450円の変化に相当すると計算でき、これは1000円超の上げを演じた15日の相場の約2円の円安の動きと符合する。つまり、1日で1000円超の株式市場の上げは驚くべきことではなく、これまでの株式市場の上昇は円安に根差してきたことの確認でしかなかったのだ。
先行きの日経平均の予測の中には、いまだ2万円回復の景気の良い声も聞こえる。しかしそのためには、統計上最低でも1ドル=120円以上の円安水準が必要だということがグラフから分かるだろう。日経平均の水準はわれわれの直感よりもドル円に依存しており、それはとりもなおさずアベノミクスが通貨安に依存してきたことにほかならない。
したがって今後の日本の株式市場の水準を決定するものは、為替の決定要因である(1)米国経済の堅調さと、(2)日銀による緩和政策の効果次第であり、十分な円安なしに日経平均の上昇はあり得ない。
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【プロフィル】板谷敏彦
いたや・としひこ 作家 関西学院大経卒。内外大手証券会社を経て日本版ヘッジファンドを創設。兵庫県出身。著書は『日露戦争、資金調達の戦い』『金融の世界史』(新潮社)など。59歳。