国際機関として発足した「ASEAN+3マクロ経済調査事務局」(AMRO)は、国際金融システムの番人である国際通貨基金(IMF)の「アジア版」と位置づけられる。アジアの国際金融安定化を目指してきた日本には、「悲願」(財務省OB)の成就といえるが、参加メンバーで国際金融での存在感拡大を目指す中国との関係に腐心する面も浮き彫りになった。
1997年のアジア通貨危機への対応をめぐっては、IMFが支援受け入れ国に厳しい財政再建などを迫ったことが「誤った処方箋(しょほうせん)」となり、地域の経済成長停滞を長引かせたとの批判もある。貿易や投資で結びつきを強めた13カ国が、目覚ましい成長を続けるアジア地域の金融安定で連携を深める意義は大きい。
欧州では、市場からの資金調達が困難なユーロ圏加盟国に金融支援を行う機関、欧州安定メカニズム(ESM)が2012年に設立された。「欧州版IMF」として、財政危機に陥ったギリシャへの金融支援などで機能している。
AMROが助言役を担う13カ国の通貨交換協定「チェンマイ・イニシアチブ」は、まだ発動されたことがない。東南アジア各国は、自国通貨建てによる長期固定の国際資金調達を進めるなど、危機への耐性も強めてきた。だが、中国の経済減速や、米国や日本の金融政策の影響など、備えの重要性は高まっている。