書籍の流通網が発達していないインドで電子書籍市場が拡大している。識字率の改善や読書熱の高まりで書籍市場全体が成長する中、価格が安く、都市部でなくても入手できる電子書籍のメリットはとりわけ大きい。国内外のIT(情報技術)企業や出版社が積極的に電子化を進め、読者獲得を競っている。
「反応は上々だ。アマゾンにやられてばかりでは駄目だからね」。インドの法律書籍、判例集の専門出版大手イースタン・ブック・カンパニー幹部のサクセナ氏は、公開したばかりのタブレット端末用の電子書籍アプリに手応えを示す。
インドでも米アマゾン・コムの電子書籍端末「キンドル」の存在感が増大。法律家や研究者、学生など独自の購買層を持つイースタンは自前アプリで市場に挑んだ。
通常約600ルピー(約1000円)のインド憲法の教科書を、電子書籍では99ルピーで販売。いずれ全書籍を電子化する方針だ。「価格の安さも学生のためになる」とサクセナ氏。
インド出版協会によると、電子書籍は電子商取引(EC)市場全体の15%を占め、毎年10%以上のペースで成長。出版社約9000社のうち、7割が電子書籍を販売している。