日銀が16日導入する「マイナス金利」は、金融政策決定会合での採決結果が5対4と分かれた。黒田東彦総裁ら執行部が緻密な票読みの上で提案した結果だ。「主な意見」からは、物価上昇率2%の目標達成に、なりふり構わぬ黒田日銀の姿がうかがえる。
「5対4のギリギリの採決で、事実上のレジーム転換を決めた」
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは1月の決定会合をこう解説する。新たな追加緩和は、長期国債の買い入れを中心とする従来の「量的・質的金融緩和」に、金利のコントロールを組み合わせる劇的な政策変更だった。
反対した政策委員は、白井さゆり氏(元職・慶大教授)▽石田浩二氏(三井住友フィナンシャルグループ専務)▽佐藤健裕氏(モルガン・スタンレーMUFG証券チーフエコノミスト)▽木内登英氏(野村証券チーフエコノミスト)の4人。いずれも市場や民間金融機関への影響など、マイナス金利の副作用を指摘した。執行部はこれを押し切る形で採決に踏み切った。
主な意見を見ると1月の決定会合で初めて、多くの時間を割いてマイナス金利導入を議論したようにみえる。だが第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「マイナス金利の弊害や副作用について、長い間議論を進めてきた経緯が隠れている」と分析する。