【日曜経済講座】 論説副委員長・長谷川秀行
諸外国と経済連携の枠組みを重層的に築くことは、国内市場の縮小が懸念される日本の成長に欠かせぬ経済外交の根幹だ。その大きな柱である環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が妥結した今、期待したいのは、これを追い風に他の交渉を加速させることである。では、具体的にTPP合意は他の交渉にどう影響するのだろうか。
まず注目したいのは、TPPと両輪で取り組むべき欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)だ。日本側が自動車や電子機器、EU側が農産品の関税撤廃などを求めており、その溝は埋まっていない。年内としてきた合意目標も「来年のできる限り早い時期」に先送りした。
振り返ると、2013年にEUが日本との交渉に応じたのはTPPに触発されたからだった。TPPのような巨大連携が新しい貿易・投資のルール作りを主導する。そんな世界の潮流に乗り遅れることを懸念したためとされる。
これを踏まえれば、EUがTPP決着に刺激され、交渉妥結へ積極姿勢をみせるのではないか、と期待したくもなるが、実際はそう単純にはいかぬ複雑さがある。いくつか例を挙げてみたい。