環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意し、アジア太平洋地域に世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める巨大経済圏が誕生する。工業製品の輸出増加が期待される一方、農業が打撃を受ける懸念もある。幅広い分野に影響が及ぶ合意内容のポイントを探った。
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■米価下落回避も焦点 新たに無関税輸入枠
日本の農業は大きな影響を受けることになる。コメは高い関税を維持するが、米国から7万トンなど新たな無関税輸入枠を設ける。農家への打撃緩和のため、政府や農業団体は飼料用米などへの転作を進めて需給を引き締めるなどし、米価の下落を避けられるかも焦点になる。
牛肉や豚肉の関税は段階的に引き下げや撤廃が実施され、輸入肉の価格の値下がりが期待できそうだ。輸入急増時に関税率を戻す緊急輸入制限(セーフガード)を設定し、畜産農家への影響を抑える。
小麦は、国が一元的に輸入を管理する「国家貿易」の枠組みを維持し、関税に相当する「輸入差益」を大幅に削減。パンや麺類の価格が下がることが期待される一方、輸入差益を財源にした農業支援策が手薄になる懸念もある。
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■中小も海外商機拡大 自動車部品関税撤廃
協定に参加した国の間で取引される工業製品の関税の大半は、最終的に撤廃されることになった。日本からの輸出の追い風となり、中小を含む国内企業は海外でのビジネスチャンスが広がりそうだ。
日本から米国への自動車部品の輸出は、8割以上の品目で2.5%の関税を協定発効時に即時撤廃する。カナダが日本の完成車にかけている6.1%の関税は5年目になくす。
ただ、米国向けの完成車にかかる2.5%の関税は15年目から段階的に引き下げ、25年目に撤廃されることになり、不利な輸出条件が長期間続く。