日本と中国が受注を競ってきたインドネシア・ジャワ島の高速鉄道計画が想定外の「白紙撤回」となったことは、日本が国策として掲げてきたインフラ輸出戦略に課題を残す結果となった。日本は技術力を、中国は工期の短さをそれぞれアピール。融資返済をめぐる条件闘争にも発展したが、双方とも決め手を欠き、痛み分けとなった。
インドネシアの高速鉄道計画では、日本が数年前から新幹線方式で売り込みをかけ「独壇場」とみられていた。しかし、中国が今年3月に参入を突如表明。投融資の支援や工期の短さなどをアピールして巻き返しを図った。
今回、インドネシアが日中案の双方とも採用を見送ったのは、昨秋に発足したジョコ政権の意向が強い。政権発足後は高速鉄道に公費を用いない方針に転換し、「国家予算を投入せず、融資への政府保証もしない」との姿勢を強調。加えて手厚い投融資まで求められた。
経済成長の著しい東南アジアで、日本と中国はインフラ輸出をめぐって真っ向からぶつかり合うことが多い。特に“花形”である鉄道分野ではタイ、インド、ベトナムなどで高速鉄道、都市鉄道、地下鉄の計画があり、今回の出来事を奇貨として、新興国が自国に有利な条件を引き出すために日中を競わせるケースが増える可能性もある。