【竜の野望】人民元の実像(中)
数値より実体経済悪化
メガバンクのある幹部は今年春、中国企業と取引する日本の中小・零細企業の動向に耳を疑った。中国の製造委託先に自ら人民元建て決済を持ちかけているというのだ。
「にわかには信じられなかった」(幹部)が、日中間の貿易決済では従来のドル建て中心から徐々に人民元建てへのシフトが進んでいる。背景には、「元建ての方が日本側に有利」という“珍現象”がある。
日本企業元建て提案
日用雑貨や玩具などを製造・販売する中小・零細企業の多くは、海外に工場を移す体力がなく、生産コストを抑制しようと人件費の安い中国の加工会社に製造を委託し、外貨として使いやすいドル建てか、円建てで決済してきた。
ところが人民元の価値はこの10年で、円など主要通貨に対し約3割も上昇した。