【新興国に翔ける】近代的小売りだけではもうからない (2/2ページ)

2015.6.30 05:00

 通常、商品は販売価格の75%が仕入れ価格として求められる。取引開始から半年間は、さらに5%の割引を要求される。そして、販売促進のために、1週間に最低4日は1店舗当たり1人1日1600円程度の売り子の派遣も求められる。他にも、特設ディスプレー代やキャンペーン支援金などが必要となる。特に競争の激しい商品分野では、既に棚のスペースが競合製品でぎっしり埋まっており、さらに金額を積まなければならないケースも多い。

 このように成長著しいASEANの近代的小売りは、年々、事業力を増している。よほど売れる商品でない限り、メーカーとのパワーバランスは近代的小売りが優位だ。近代的小売りに商品を置くと、売れようが売れまいがお金がかかる。近代的小売りの比率が高い国は、お金がかかっても、商品が売れれば問題ないが、VIP市場はその比率が20%前後とまだ低い。

 一方で、伝統的小売りはそのようなリベートを必要としない。何十万店、何百万店と存在する伝統的小売りを攻略するには、強固な販売ネットワークを作り上げなければならず、時間と労力はかかるが、いったん作り上げてしまえば、近代的小売りとの交渉の面でも大きな力となる。

 ASEANの中でも特にVIP市場は、近代的小売りと同時に伝統的小売りも攻略しない限り、メーカーが持続的に利益を上げていくことは難しい。

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【プロフィル】森辺一樹

 もりべ・かずき 海外販路構築のスペシャリスト。10年以上にわたり1000社以上の海外展開の支援実績を持つ。アジア新興国市場の販路構築が専門。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。“アジアで売る”ためのノウハウをネットラジオで無料配信中! www.spyderagent.com/podcast

 >>森辺氏のツイッターは @kazukimoribe

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