「金融政策を変える必要ない」 黒田日銀総裁、強気続けざるを得ない実情も 

2015.5.22 21:36

金融政策決定会合後に記者会見する、日銀の黒田総裁=22日午後、日銀本店

金融政策決定会合後に記者会見する、日銀の黒田総裁=22日午後、日銀本店【拡大】

 日銀が金融政策決定会合で、景気判断を前進させた。微妙な表現で判断を修正していくのは、“日銀文学”とも揶(や)揄(ゆ)される。ただ、黒田東彦総裁は22日の会見で「半歩というか一歩前進」という言葉を使い、景気回復が進んでいることを強調した。

 黒田総裁は、「わたしどもが考えていた線に沿って経済、物価が動いているので金融政策を変える必要はない」と明言。追加緩和の手段についても「具体的には考えていない」と述べた。市場に根強い追加緩和観測を、当面は否定した格好だ。

 黒田総裁が強気の姿勢を変えないのは、景気回復の足取りが緩やかながらも、「足元では、設備投資が増加し、雇用所得環境は着実に改善している」と確信しているからだ。

 日銀が国債を大量に買う大規模金融緩和で、金利は低下。黒田総裁は、「金融機関の貸し出しが増え、企業は設備投資に、個人は住宅購入資金などに回す動きが出てきている」とこれまでの政策に一定の手応えを示した。黒田総裁は「昨年10月の追加緩和は、時期も含め間違っていない」とも強調した。

 ただ、強気の発言を続けざるを得ない実情があるのも事実だ。黒田総裁が「想定外だった」と話す原油価格下落の影響で、夏にも物価上昇率がマイナスに落ち込む可能性が高い。ここで、弱気の姿勢を示せば、2%の物価上昇率の目標に暗雲が垂れこめ、景気回復の足取りが遅れる可能性も出かねないからだ。

 ある日銀幹部は、マイナスに落ち込んだ際に波及しかねない動きとして、デフレ下で業績を伸ばした牛丼チェーン「吉野家」を引き合いに出し、「(物価下落を受けて)今夏に値下げに踏み切れば、再びデフレの流れが進むかもしれない」と懸念する。そうなれば、企業や消費者のデフレ心理が高まり、追加緩和の必要性に迫られる。

 黒田総裁は、「リスク要因を点検し、必要な調整を行う」と語り、状況に応じて追加緩和を行う姿勢も改めて強調した。

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