【一筆多論】乾正人
ついに日本が「空母」を再び保有した。と、あの番組を見た中国人の多くは感じたかもしれない。
中国国営のテレビ局CCTVが、「准空母」とテロップで紹介したのは、先月就役した海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」だった。
就役前夜、たまたま上海にいた。チャンネルをCCTVにあわせていたのだが、午後9時半からのニュース番組トップで「いずも」を扱っていたのに驚いた。番組では、今夏に試験飛行が予定されている先進技術実証機「心神」の話題とあわせて日本のテレビ局よりも手厚く特集していた。
確かに「いずも」は全長248メートル、基準排水量1万9500トンと護衛艦では最も大きい。艦首から艦尾までを貫く甲板を備えており、見た目は航空母艦そのもの。
しかし、離着艦できるのは大型ヘリコプターのみで、自衛隊は「いずも」に離着艦できる艦上戦闘機を保有していない。
しかも航行している船舶に戦闘機が着艦するのは、「赤城」「飛龍」の昔から機器が格段に向上した今も至難の業だ。高度な技量を要求される艦上戦闘機のパイロットを多数養成するにはカネも時間もかかるし、具体的な計画もない。