【論風】元経済産業事務次官・北畑隆生 成長戦略の鍵握るサービス産業 (3/3ページ)

2015.3.12 05:00

 ◆高齢者向け市場に商機

 サービス産業が製造業と異なるのは「生産と消費の同時性」で、在庫が効かず、貿易がなじまず、人口集積の経済効果が大きいことである。有名な経済賞を受賞された森川正之経済産業研究所副所長の「サービス産業の生産性分析-ミクロデータによる実証」は、これを分析した名著である。同氏は、(1)都市集積(2)需要平準化(3)企業統治(4)新陳代謝-が重要と指摘する。これらにうまく対応したコンビニエンスストア、ファミリーレストラン、アミューズメントパークなどは、本家米国を上回るハイブリッドな成長に成功した。日本人が得意とするカイゼン、創意工夫、顧客本位、信頼性重視などの企業行動がサービス業でも発揮された。

 高齢化の進展で毎年、数兆円単位の需要拡大が進む医療、介護、健康などの分野で生産性の高いサービス産業を育てることは、福祉の充実のみならず日本経済の成長率を高める観点からも重要である。しかし、政府による需給調整、価格統制、安全などの観点からの法規制が多い分野である。優れた企業による創業や非効率な企業の退出による生産性の向上があまり見られず、コンビニなどとは対照的な世界だ。成長戦略において岩盤規制の緩和が必要なのは、この分野ではないかと思う。

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【プロフィル】北畑隆生

 きたばた・たかお 東大法卒。1972年通商産業省(現経済産業省)入省。官房長、経済産業政策局長を経て2006年事務次官。08年退官。13年中東協力センター理事長、三田学園理事長兼校長。65歳。兵庫県出身。

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