■国民利益実現へ長期的視点を
先週、全国農業協同組合中央会(JA全中)が政府・自民党の農協改革案受け入れを表明し、農協改革がいよいよ佳境に入ったとみられている。しかし実際は佳境でも何でもない。ほんの第一歩でありゴールははるかに遠い。
この改革の最も重要なポイントは、誰のため、何のための改革なのかを明確にすることだ。農業者の健全な発展を促し、(1)食料安全保障(2)食の安全、安心と国民の健康(3)地方経済の活性化-をもたらすものでなければならない。自民党や農協の、権力闘争でもなく、また選挙対策であってもならない。農業業界のみならず、国民全体のための改革である。
農協グループは、大きく3段階で形成されている。各地の単一農協(単協)、都道府県レベルおよび全国レベルである。今回の改革案では、全国レベルのJA全中と全農を、新体制に移行し、単協の自由な経済活動を促進するとしている。JA全中の、単協に対する監査・指導権の廃止は、いまだかつて手出しできなかった岩盤に切り込んで、自由な経済活動を促進しようということで、一定の評価はできる。
◆必死の巻き返しも
しかしながら、それだけで農業を成長産業に転換することはできない。自民党内部からも、監査・指導権を廃止することが、なぜ農家所得向上や農業の発展につながるのか理解できないという声が多い。二の矢、三の矢という、総合的な農業活性化策の戦略が明示されていないからだ。