JPモルガン・チェース銀行によると日本の対外純資産は外貨建てで469兆円にのぼる。佐々木融・債券為替調査部長は「1%の円安で、国富は約4・7兆円増える」と試算する。
また、米国の緩和マネーが投機的に原油などの資源価格をつり上げたため、エネルギー資源の大半を輸入に頼る日本の貿易赤字が膨らんだとの見方もある。
SMBC日興証券の牧野氏は「米国金融政策の正常化に伴って、日本の貿易赤字の悪化も収まる」と見込む。実際、アジア市場の指標となる中東産ドバイ原油価格は下がりつつある。
ただ、リーマン・ショックと東日本大震災を経て、製造業を中心に日本の産業構造が変わったとの見方は根強い。
第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは、製造業の大半の業種で輸入比率が拡大したと分析する。「企業が円高対応を進めたことが、逆に円安への対応を難しくしている」と指摘する。
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■10円の円安で… 上場企業2兆円増益 中小は1.3兆円減益
みずほ銀行産業調査部の推計では、10円の円安で上場企業は約2兆円の増益になる。だが、中小を含む非上場企業は約1兆3千億円の減益になるという。8月からの円は対ドルで約8円円安に振れた。市場では、急速な円安が実体経済に与える影響を見極めようとする動きも予想される。