首都圏鉄道を運営する国鉄コミューター・ジャボデタベックは、今年の年間乗客数が3億28万人で運賃総額が約64億円と予想する。昨年の年間乗客数1億1284万人、運賃総額約26億円と比べてそれぞれ3倍近くまで伸び、利用者は1日平均で約30万人から約80万人へと増える計算だ。
乗客が増えるにつれて、サービスも飛躍的に向上した。これまで車内アナウンスがなく窓には厚い遮光シートが張られていたため、外が暗くなる夕方以降になると乗客はどこを走っているか確認するのに苦労したが、半年ほど前からは「次の駅は…」や「お降りの方は切符や手荷物など忘れ物がないように…」などとアナウンスが流れるようになった。また、車内つり広告が掲示されるようになり、車両の外側面を使った大型広告も登場した。
◆歴史の転換点
このサービス向上の立役者となっているのが、日本で活躍した中古車両だ。00年に東京メトロの中古車両が譲渡されて以来、現在では642両の「旧日本車両」がジャカルタ首都圏を走行している。現地の鉄道雑誌「クレタ・アピ」では「インドネシアにおける冷房電車の歴史の始まり」と中古日本車両の導入が大きな転換点だったと指摘する。最近ではJR埼京線で使用されていた「205系」という折りたたみ式シートで扉が片面に6枚ある車両も登場した。
沿線住民にとっては、「渋滞のない移動手段」から「安くて快適な交通手段」へと変身した。中には日本車両でも古いために冷房が効かないものもあるが、「たった2000ルピア(約20円、初乗り料金)で快適さまで求めるのかい?」と陽気なインドネシア人は笑い飛ばす。
なにより、「旧日本車両」の貢献で首都圏鉄道がより身近な存在となり、利用価値が高まったことが朗報だ。鉄道のほかにも、日本がお家芸とする技術がジャカルタなどインドネシア国内で役立つことを期待したい。(在インドネシア・フリーライター 横山裕一)