政府がオーストラリアとの経済連携協定(EPA)交渉で大筋合意したことで、日本企業は自動車の輸出競争力の確保や、石炭など資源の安定調達が期待できる。消費者にとっても豪州産牛肉「オージー・ビーフ」の価格引き下げなどの恩恵が予想されるが、国内の畜産業界の打撃は必至だ。
日本の自動車メーカーにとって、豪州は米国に次ぐ2番目(約35万台、2013年)の輸出相手国。EPAで乗用車関税(5%)が撤廃されれば、「国内拠点の輸出競争力が大きく向上する」(日産自動車関係者)と歓迎の声が上がる。
豪州市場ではカローラ、カムリなどのセダンが好調なトヨタ自動車が2割近く(13年)のシェアを占めて首位を走るなど日本勢がトップ10のうち6ブランドを占める。ただ、豪州は15年にも発効する韓国との自由貿易協定(FTA)で中小型車の関税を即時撤廃する方針で、シェア4位に迫る韓国・現代自動車の躍進が懸念されていた。このため日豪EPAの大筋合意に、日系各社は「これで競争環境が平等になる」(マツダ幹部)と胸をなで下ろす。
また、日本は資源国の豪州から石炭や液化天然ガス、鉄鉱石を輸入している。EPAには資源の安定供給を約束する章も含まれる見込みで、資源価格の高騰に苦しむ鉄鋼やエネルギー業界にも朗報になりそうだ。