【論風】一橋大学名誉教授・石弘光 秒読みに入った消費税増税 (1/2ページ)

2014.3.27 05:00

 ■97年トラウマ、杞憂にすぎず

 4月から消費税率が8%に引き上げられることから、景気への悪影響が心配されている。国会審議などを見ていると、前回、1997年度に実施した3%から5%への消費税率引き上げによる増税により日本経済が失速したとしきりに議論されている。

 消費税の議論は、過去の歴代の内閣が多々苦汁をなめた経緯もあり政治的トラウマと化しているといえる。今日なお、このトラウマ現象が尾を引き政治的には過剰な反応が多いと思う。

 ◆税収中立のスキーム

 97年4月の消費税率引き上げは橋本龍太郎内閣によって行われたものだが、しかしそれは3年前に村山富市内閣によって決定された増減税一体処理のスキームによるものであった。

 つまり94年9月に税制改革関係法案として提示され、まず景気刺激のために所得税などを減税し、3年後のその減税財源の確保のために消費税率を引き上げ、この間はつなぎ国債の発行で賄うとするパッケージが組まれていた。その増減税は4.8兆円と戦後最大の規模で、おのおの同額で税収中立となっていた。

 当時も、この消費税が増税されることによるデフレ効果は懸念されていた。しかしながら、税率引き上げ前の四半期別実質国内総生産(GDP)は、95、96年の間、連続してかなりの伸びを示し、景気は底堅く増税は反対もなく予定通りに実施された。

 ◆国民負担9兆円

 97年4月に税率引き上げが実施された後、4~6月期の民間最終消費支出は3.5%下落しているが、これは増税前の消費のいわゆる駆け込み需要の反動であり、7~9月期には消費は持ち直しプラスに転じている。同様に実質GDPの成長率も、4~6月期に一旦マイナス0.8%まで下落したが、その後、2四半期上昇を示している。消費税率引き上げの悪影響は、半年間で一応対応できたかのように見える。

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