【ワシントン=青木伸行】米政府は26日、安倍晋三首相の靖国神社参拝は、中韓両国とのさらなる関係悪化をもたらすもので「失望している」と表明した。その一方で米国内には、参拝を正当なものであるとして支持する見解があるのも事実だ。
在日米国大使館の声明では「首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に留意する」とも指摘した。ただ、米政府としては、バイデン副大統領が今月、中国の防空識別圏設定で高まった緊張を緩和するため、日中韓を歴訪したばかりのことでもあるだけに懸念を強めている。
米政府にはこれまで、首相の靖国神社参拝を思いとどまらせようとしてきたフシがある。10月にケリー国務、ヘーゲル国防両長官が訪日した際、宗教色がなく、A級戦犯が合祀されていない千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れ献花したのも、靖国参拝を牽制(けんせい)する意味合いがあったとの見方もある。
米主要メディアも異口同音に「中国、韓国との論争に火を付ける」(CNNテレビ)などと否定的に伝えたが、これらとは異なる見解を米国で表明してきたのがジョージタウン大学のケビン・ドーク教授だ。
教授は今年に入り、産経新聞などの取材に「日本の政治指導者が自国の戦死者の霊に弔意を表することは外交・安保政策とは何ら関係はない」と述べている。
教授はこれまでにも、「民主主義的な選挙で選ばれた政治指導者が、戦死者の霊を追悼することは、平和への脅威や軍国主義への前進になるはずがない」と強調。米国のアーリントン国立墓地には、奴隷制度を守るために戦った南軍将校も埋葬されている事実を指摘し、ここを歴代大統領が訪れたというだけで「奴隷制度を肯定したことにはならない。同様に靖国神社参拝も、日本が関わった戦争の全面的肯定を意味しない」と主張している。