カブドットコム証券の「移動営業所」。NISA導入を控え、PRも兼ねて最新機器を搭載した専用車両を都内各地に走行させている【拡大】
しかし、年100万円以下という投資規模の小ささに加え、手数料の優遇なども行っており、NISAによる証券各社の増収効果は当面、限定的だ。それでも各社が初期投資を惜しまないのは、NISAがこれまで掛け声倒れに終わっていた「貯蓄から投資へ」を実現するまたとない好機とみているからだ。
証券関係者がNISAを語るとき、引き合いに出されるのが日銀の「資金循環統計」だ。日本では個人金融資産の大部分が預貯金に偏っているが、逆に、「未開拓の大きな市場が広がっている」(関係者)とも言える。各社は裕福な個人投資家の高齢化が進むことにも危機感を抱いている。NISAを機に若い世代を投資に呼び込もうと懸命だ。
各社の競争がサービスを競い、顧客に「成功体験の積み重ね」(大和の日比野隆司社長)を提供できれば、投資家層を拡大できる可能性がある。日本取引所グループの斉藤惇最高経営責任者(CEO)は「NISAを大事に育てていかなければならない」と期待を寄せている。(高橋寛次)