【専欄】難しい日本企業の現地化 甲南大学教授・杉田俊明 (1/2ページ)

2013.11.14 05:00

 日本企業の中国現地法人で中国人社長が増えている。中国に限らず、海外進出企業にとって現地化は早晩、実現すべき課題だ。現地法人の社長が現地人になったところで、とりわけ話題になるようなことでもない。

 だが、昨今はやむを得ない事情もあり、中国では現地の対日感情から派生する影響がその背景にある。

 現地法人の社長は楽ではない。逆風の中でも日本企業の看板を背負い、トップセールスに励み、業績を挽回しなければならない。しかし、営業拠点や客先を回り、宴会を開いて乾杯に挑むのを厭(いと)わないにしても、微妙な雰囲気の中で市場情報の収集や人脈づくり、特に際どい駆け引きには日本人では、どうしてもかなわない部分がある。今は相手側も、このような機会を避けようとしている場合もある。

 社内の人事管理でも、「褒める」ことで人が育つほど甘くない。かといって「育てるために」と叱咤(しった)すると、「日本人対中国人」の構図の中で強い反発を招くことがある。

 もともと日本人の駐在コストが高い。社内外とのコミュニケーションも、語学力不足から能力を発揮できない場合もある。これに微妙な対日感情が加わり、経営陣を現地化するのが一案ではある。

 その結果、「日本」や「日系」という表現が影を潜め、「現地企業」「中国人幹部が経営する外資企業」といった看板を据える企業が増えている。

 もっとも、中国式の駆け引き、情報収集や人脈づくりは、中国人の方が得意であることはいうまでもない。そして、客先や仕入れ先にも、社内の人事管理も、問題のありようをよく知っているだけに、中国人幹部の方がはるかに厳しい対処をする。その厳しさは現地出身者だからできるものである。

 一方、生産管理や対顧客サービスなど日本企業が本来得意とする領域も放棄して、安易に現地化を図るならば、現地進出する本来の意味を失いかねない。

 経営陣を現地化して成功した企業の事例はまだ多くはない。限られた成功例に共通しているのは、現地経営陣たちはもともと経営センスがあり、かつ日本企業の現場で鍛えられたことがあることだ。

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