パキスタンが赤字続きの国営企業の大規模な民営化に乗り出した。同国の内閣民営化委員会は先月、国営企業31社の民営化計画を取りまとめた。経営不振の国営企業の経営を民間に移管し、国の財政赤字の削減を図る。現地英字紙エクスプレス・トリビューンなどが報じた。
計画に明記された31社の中には同国航空最大手パキスタン国際航空、全国で総延長約8000キロメートルの路線の運行を担うパキスタン鉄道、製鉄大手パキスタン・スチール・ミルズも含まれる。政府は石油・ガス、電力、金融、不動産などの重要産業を含め、多様な分野の国営企業の民営化を進める方向だ。
パキスタン投資庁のズバイル長官は、政府が保有する国営企業の株式を譲渡や株式市場での売却といった手段で手放し、順次経営権を民間に委ねていくとしたうえで、「各企業の価値は市場が判断するだろう」と述べた。期間については1年から1年半で手続きを完了させたいとの意向を示した。
また、同長官は民営化の効果について「民営化に加え、その他の国営企業も全面的な経営改革を進める。すべてが完了すれば、年間で5000億パキスタンルピー(約4588億円)の損失削減を実現できる」と述べた。
パキスタンは今年9月に国際通貨基金(IMF)から3年間で総額67億ドル(約6597億円)の経済支援を受けることで合意しており、民営化を含む国営企業改革は支援条件の一つだった。
財務省によると、昨年度(12年7月~13年6月)の同国の財政赤字は国内総生産(GDP)比の8.8%に達し、13年3月末時点の対外債務残高は同25%の609億ドルまで膨らんだ。
IMFをはじめ国際社会から継続的な支援を受けたいパキスタン政府にとって、赤字削減は重要課題の一つ。民営化計画を軌道に乗せ、財政健全化につなげられるかどうか、シャリフ政権の決意と指導力が問われている。(ニューデリー支局)