三菱重工業を含む企業連合は29日、トルコが黒海沿岸の都市シノップで計画している原発建設を受注することで同国政府と正式に合意した。トルコを訪れていた安倍晋三首相はその後、イスタンブールでエルドアン首相と会談。正式合意を歓迎し、原子力分野での協力促進を確認する共同宣言を発表した。東京電力福島第1原発事故後、日本の原発輸出が正式に決まったのは初めてとなる。
安倍首相は会談後の共同記者会見で「原発事故の経験と教訓を共有することで世界の原子力安全の向上を図ることは日本の責務だ」と述べ、安全確保を前提に原発輸出を推進する考えを強調した。エルドアン首相も「トルコには原発が必要だ」と語り、日本の原発技術への期待を示した。
安倍首相は「大型インフラ事業をはじめ、経済分野での協力の方策についても議論した」とも説明した。
会談では、首脳級による安全保障の戦略対話を進めることで一致。両国が協力してトルコに科学技術大学を設立することや宇宙開発分野での協力促進も確認した。シリアやイラン情勢についても意見交換した。
両首相は会談に先立ち、ボスポラス海峡を横断する地下鉄の開通式典に出席。関連の行事が長引き、首脳会談の開始が約2時間遅れたため、予定した日本・トルコの経済連携協定(EPA)交渉に向けた事前協議開始の合意は見送られた。
安倍首相は30日夕、政府専用機で帰国した。(豊田真由美)