【新興国に翔ける】日本企業の世界競争力

2013.10.29 05:00

 □スパイダー・イニシアティブ 代表・森辺一樹

 1992年、日本は、世界競争力ランキングで第1位、頂点に君臨していた。92年というと、ちょうど、ソニーがMDプレーヤーの1号機「MZ-1」を発売した年だ。

 あれから20年、日本の、そして日本企業のグローバル・ビジネスにおける競争力は大きく変化した。

 2012年、日本の世界競争力ランキングは26位にまで後退した。

 そして今年、ソニーは、ついに20年間続けたMDプレーヤーの販売をすべて終了した。その理由は、半導体メモリーによる携帯型音楽プレーヤーやスマートフォン(高機能携帯電話)の台頭で、MDが使われなくなったからだ。

 92年のFortune(フォーチュン)500に入る日本企業の数は、119社と米国の157社に続き第2位であった。一方で、12年は、68社と4割以上の企業が姿を消した。1位は、変わらず米国で132社、そして、2位が中国の73社と日本を上回った。

 フォーチュントップ100に入る日本企業も、92年には20社あったが、現在では12社へと4割が消えた。ちなみに、92年に40位だったソニーは、現在87位。13位だったパナソニックは、現在66位、そして、39位だったNECは、現在ランキング外だ。

 一方で、92年にはランク外であったアジアの企業が数多くランクインしている。

 20年前、日本企業と比較する対象は常に欧米の企業であった。日本企業をアジアの企業と比較するなど、大差がありすぎ、そんなナンセンスなことをする人はいなかった。しかし今は違う。

 欧米から見ても、日本企業はアジアの中の一企業に過ぎない。それを裏付けるランキングが、アジア企業時価総額ランキングだ。日本企業は、トヨタ自動車、ホンダ、NTTドコモのわずか3社、残りは全て中国と韓国の企業だ。03年当時、1位だったトヨタ自動車は4位に後退し、1位は、時価総額2648億ドル(約25兆8230億円)で、中国石油天然気(ペトロチャイナ)だ。

 この20年間で、日本の、そして日本企業の世界的なプレゼンスは大きく後退した。

 これら事実から分かることは2つ。

 どんなに「ものづくり」にたけていても、世界でそれを売る力がなければ何の意味もない。どんなに品質が良くても、世界で売れなければ、それはただのゴミだということだ。

 日欧米に加え、アジアまでもが市場となった真にグローバル化した現代、製造業といえども、「ものづくり」以上に、「販売チャネルづくり」に力を注がなければならない。

 そして、もう一つは、かつての日本企業がそうだったように、「ドリーム・プロダクト」を生む力を備えなければならない。多くのモノがコモディティ化した現代では、アジアの企業でも作れるようなものを、「高いけど高品質」で作っても誰も買わない。米アップルや英ダイソンのような、たかが携帯電話なのに、たかが掃除機、扇風機なのに、高いけど、使い手がそれを使うことを誇りに思う、他のどの製品でも代替できない気持ちにさせる、そんなドリーム・プロダクトを生み出す力が必要だ。

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【プロフィル】森辺一樹

 もりべ・かずき 海外販路構築のスペシャリスト。10年以上にわたり1000社以上の海外展開の支援実績を持つ。アジア新興国市場の販路構築が専門。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。“アジアで売る”ためのノウハウをネットラジオで無料配信中!

 www.spyderagent.com/podcast

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 >>森辺氏のツイッターは @kazukimoribe

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