政府の少子化対策のメニューの一つに「結婚」が急浮上している。これまで「子育て支援策」「育休・産休を取得しやすい環境づくり」などが優先されてきた分野だが、加速する少子化を解決するには「個人の自由意思」に委ねられることが多かった結婚対策にも取り組まなければならないというわけだ。
若者の未婚率は上昇し続けている。国立社会保障・人口問題研究所によると、20代後半の未婚率は男性で約7割超、女性で約6割超。30代前半でも男性の約47%、女性の約35%が未婚のままだ。結婚しない理由の代表例は経済的問題といえる。いつ解雇されるかわからない非正規雇用の若者が容易に結婚するとは考えにくく、例えば雇用環境の改善は結婚対策の王道だ。
もちろん、正規雇用になれば結婚するのかというとそんな単純な問題ではないが、経済的な問題さえ乗り切れば結婚するというカップルは少なくない。全国には新婚夫婦向けに公営住宅を格安で提供するなどの独自施策で少子化を克服している自治体もある。政府は新婚夫婦への財政支援策は有効としており、税制優遇も含めた画期的な対策を検討している最中だ。
一方で「政府が個人の問題である結婚に介入するのはいかがなものか」という批判もある。確かにもっともな意見ではあるが、100年後には、日本の人口はほぼ半分になると推計されている以上、個人の意思に任せたままでは日本民族は消滅の方向へいってしまう。政治が民族消滅を是とするわけがなく、結婚を含む少子化対策は民族の未来を左右する問題ともいえる。
婚外子を増やせばいいという議論もある。日本は世界の中でも婚外子の割合が極端に低く、わずか2%台。2~5割の欧州とは比較にならないレベルだ。ただ、文化的にも社会的にも婚外子を受け入れる準備はできていない。少子化対策は即、結婚対策という認識が不可欠だ。(山本雄史)