投資家が想定する緩和策を打ち出せるうちは、円安や長期金利の低下(国債価格の上昇)といった日本経済に心地良い市場環境が続く見込み。だが、「先行期待が大きい分、緩和策が出尽くしたとみえると、円の先安感が急速にしぼむ懸念もある」(大手証券)
日銀によると、1980年代後半のバブル期でも物価の上昇率は平均1.3%止まりだ。2%の物価上昇の早期達成のハードルは高く、追加緩和と物価上昇の相関関係に十分な説得力を示せないと、新体制は市場や消費者のデフレ脱却期待をつなぎ止められない。
一方、黒田新体制は、安倍政権との二人三脚で歩み出すが、今後政治との距離感をどう保つかという課題も抱えそうだ。
黒田氏は「緩和の中心は国債購入になる」としているため、緩和を拡大するほど、財政ファイナンスの懸念は根強く残る。また、潜在成長率の底上げを伴わない形で、物価だけが上昇すれば家計の負担感が増すばかりだ。
政権との良好な関係を持つ黒田氏が、財政再建や規制改革・構造改革の取り組みに厳しい直言ができるかが問われている。