日本企業によるカンボジアへの投資案件が急増している。投資にはカンボジア政府の認可が必要だが、誘致の旗を振るカンボジア開発評議会(CDC)によると、投資決定は年内に昨年の2倍となる40件まで膨らむ可能性があり、空前の投資ブームの様相だ。労働力の安さと税制優遇される工業団地など恵まれた投資環境が魅力となっており、中国リスクを回避する「チャイナ・プラスワン」の候補地としても、注目が集まっている。(上原すみ子、写真も)
カンボジアの首都プノンペン市街から車で西へ約45分。住友電装(三重県四日市市)グループは「プノンペン経済特別区」で4月半ばからワイヤハーネスの生産を始めた。
カンボジア現地法人の亀本進一社長は「中国の人件費高騰が最大の進出動機だった」と打ち明ける。
複数の電線を束にしたワイヤハーネスは機械化に適さず、人手がかかるだけに人件費を抑えないと競争力を損なう。カンボジアの平均月額賃金は約80ドル(約6400円)強。福利厚生費も含めると100ドル近いが、それでも中国やタイの3分の1前後だ。日系進出企業の約8割がチャイナ・プラスワンだという。
日中関係悪化も影響
家電向け電線組み立てのアスレ電器(横浜市)は他のメコン新興国も検討したが、賃金がさらに安いミャンマーは工業団地など投資環境整備に時間がかかり、ラオスは人口が1400万のカンボジアの半分以下で人材確保に懸念があった。現地子会社の大島淳一会長は「消去法ですぐに進出できるのが決め手になった」と話す。