海外情勢

中国「しつけ法制化」 全人代常務委員会で審議、教育へ介入強める共産党・政府

 【北京=三塚聖平】中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は19日、北京で会議を始めた。家庭でのしつけを充実させるよう求める「家庭教育促進法」案などを審議する。同法は、家庭教育への保護者の意識向上を狙うが、子供の著しい不良行為に関して保護者に訓戒を行うことも定める。中国共産党・政府が教育への介入を進めている。

 同法案は、今年1月と8月に続く3回目の審議。今回の会議は23日までの予定で、最終日に法案が可決される公算が大きい。

 中国メディアなどによると同法案は、未成年者の保護者が「家庭教育を行う責任を負う」と定めた。家庭教育については「道徳と品格、知識技能、文化的教養、生活習慣などの育成」と規定。保護者に対し、未成年者の学習習慣や自主学習能力の育成のほか、心身の健康や運動、十分な睡眠などを確実にするよう求める。また、党や国、社会主義を愛し、国家統一や民族団結を守る意識を確立することも定めた。

 未成年者が著しい不良行為や犯罪行為を行っていることを公安機関などが見つけた場合、保護者を訓戒したり、家庭教育に関する指導を受けるよう命じたりすることが可能になる。

 中国では、保護者が子供の成績を過度に重視し、家庭で適切なしつけが行われていないほか、勉強に関する過重な負担が子供に悪影響を与えていると指摘される。全人代常務委法制工作委員会の報道官は「未成年者に過度の学習負担を与えたり、インターネットに関するしつけをおろそかにしたりする保護者がいる」と指摘し、対応策を強化したと説明している。

 習近平政権は教育に関する統制を強めている。今夏には党と政府が、既存の学習塾を非営利組織とし、小学3~6年生の宿題時間は60分以内、中学生は90分以内にするといった具体的な規制措置を打ち出した。家庭教育促進法案も、営利目的で家庭教育の指導サービスを行うことを禁じる。児童・生徒の負担軽減という狙いに対し、効果を疑問視する意見も少なくない。