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緊急事態宣言再発令 与野党「アピール合戦」に対し、政府は防戦一方

 新型コロナウイルス対策のための特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令に先立ち、西村康稔経済再生担当相は7日、衆参両院の議院運営委員会で説明を行った。野党は感染防止とともに経済再生を重視してきた菅義偉首相の対応が遅いと糾弾し、与党からも同様の指摘が出た。10月までに行われる衆院選を意識したかのような与野党の追及に対し、政府は防戦を余儀なくされた。

 「感染拡大防止よりも経済を最優先してきた姿勢が後手後手の対応を招いたと言わざるを得ない。対応が後手に回ったことが医療崩壊を招き、宣言発令という、より厳しい措置が必要となった」

 衆院議運委で質問に立った立憲民主党の枝野幸男代表はこう述べ、観光支援事業「Go To トラベル」などを推進してきた首相の姿勢を厳しく追及した。

 さらに、議運委での再発令の説明を野党が求めていた首相ではなく、新型コロナを担当する西村氏が行ったことも批判。「世界的な危機に直面し、多くのリーダーが先頭に立って国民に直接呼びかけている。首相にリーダーの自覚が欠けていることは甚だ残念だ」と突き放した。

 共産党の塩川鉄也氏も「『Go To トラベル』に固執した首相の対応が感染拡大抑止に逆行するものとなった」などと訴えた。

 野党の激しい追及には、新型コロナの感染再拡大や宣言再発令を菅政権の「失点」と印象付けることで、衆院選や18日から始まる通常国会での論戦を有利に運びたいとの思惑が透ける。国民民主党の玉木雄一郎代表は記者会見で「仕事をとめなければならない店舗にどういう支援をするのか全く見えない。浮輪もなく、冷たい海に投げ込まれるようなものだ」と語気を強めた。

 苦言を呈したのは与党も同じだ。自民党の松本洋平氏は政府の新型コロナ対応について「年明けのタイミングで宣言を発令した理由は何なのか。もっと早く、発令すべきだったとの批判にどのようにこたえるのか」と強調。公明党の佐藤英道氏も「(宣言期間の)2月7日までに解除できるように、どのように政府は手を打つのか。国民に丁寧に説明してほしい」と注文をつけた。

 宣言再発令という「最後のカード」(政府高官)を切っても感染収束に導けなければ、菅内閣の支持率低下に拍車がかかるのは必至だ。4月25日には衆院北海道2区と参院長野選挙区の両補欠選挙、そして衆院選が控えており、苦言は与党側の焦燥感のあらわれとも言える。

 一方、与野党の過度な“アピール合戦”を懸念する声も少なくない。政府と与野党が結束して新型コロナ対策に臨むべきだと主張する自民幹部は「国民の目にどう映るのかを考えるべきだ」とあきれた様子で語った。別の幹部は政府批判に関し「どんな決断をしても不満を抱く人は必ず出てくるので耐えるしかない。それが政府の宿命だ」と述べた。(永原慎吾)