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午後8時閉店「苦しい」 緊急事態宣言検討で飲食店ため息

 官庁や多くの会社が仕事始めを迎えた4日、政府は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化している東京都など首都圏1都3県に対し、緊急事態宣言を再度発令する検討に入った。「苦しいが仕方ない」「もっと早く出せなかったのか」。新年を迎えても収まらないコロナ禍。営業時間の短縮要請を受ける飲食店からはあきらめの声が聞かれる一方、首都圏の人々からは批判や注文も相次いだ。

 「午後8時閉店だとラストオーダーは午後7時。普段、お客さんが集まりだすのは午後6時半ごろなので、選択肢から外れてしまう」。東京・新橋のビアホール「ビアライゼ’98」社長の松尾光平さん(55)は、ため息をついた。

 政府に緊急事態宣言の再度発令を要請した4都県は、飲食店に要請する閉店時間を午後8時に前倒しすることで一致。松尾さんは「うちは時短要請に従うつもりだが、4月の(緊急事態宣言発令の)ときは従った店も、今回どれだけが従うだろうか」と心配する。

 新宿三丁目にある焼き鳥店「やきとり酒蔵庄助」でも、似た悩みを抱える。店長の長川政治さん(65)は「苦しいけど仕方ない」と時短要請を受け入れる見込みだが、店は夕方開店し、1時間半~2時間程度滞在する客が多い。「午後8時は『さあ、これから』という時間。せめて午後9時にしてくれれば…」。近くのバー「KOHAKU」の荻田優子店長(47)は「うちは午後6時開店なので、2時間しか開けられない」と嘆いた。

 現在、都が行っている飲食店への時短要請は、酒類を提供しない店は対象外だが、緊急事態宣言が発令されれば、酒類を提供しない店も対象となる見込み。新宿区で深夜営業する喫茶店の女性店長(36)は「時短要請は仕方ない」としつつ、「4月の緊急事態宣言で時短営業をした際には、夜に営業しない分、お客さんが昼に集中した。深夜まで営業した方が(密にならず)むしろいいかも」と、複雑な胸中を表した。

 横浜市の横浜中華街は、道行く観光客もまばら。ランチの時間帯にもかかわらず客がいない中華料理店では、経営者の男性(50)が「緊急事態宣言を出すのは分かるが、補償をしっかりと決めてくれないと特に私たち飲食業は困る」と憤る。夫と小学生の息子2人と一緒に来た埼玉県川口市の主婦(32)は「正直、判断が遅かったのではないかと思う」と途方に暮れた表情を見せた。

 普段ほどの人通りはない東京都千代田区のJR有楽町駅前。西東京市の男性(63)は「再発令はやむを得ない。宣言を通じ危機感を共有することが大事だ」と強調し、「経済も大事だが、命が最優先。外出や会食を避けるなど、自分なりに対策は取っている。国は感染拡大の原因を突き止めてほしい」と求めた。

 東京五輪への影響を懸念する声も。都の準備担当者は「楽しみにしてくれている人もいるので、なんとか開催したい」。別の職員は、大会実現に向けた早期の発令になるとの見方を示し「しっかり準備を進める」と前向きに捉えていた。