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INPIT ウィズコロナ時代の事業移行に手引書

 特許庁傘下の公的機関として47都道府県に知財総合支援窓口を置く工業所有権情報・研修館(INPIT)は1月中旬の完成を目指し、中堅・中小企業のための「ウィズコロナ知財活用ガイドブック」の策定を進めている。新型コロナウイルス感染症の研究が進みワクチンが準備されつつあるが、企業の事業を存続あるいは転換を支援するためのワクチン開発も急務である。

 ガイドブック策定について、INPIT知財活用支援センターでは「多くの企業で今、自社事業をニューノーマル(新常態)時代の需要に合わせたものへと進化させることが求められている。ガイドブックは、知財活用の利点を絡めつつ、新事業の移行戦略の考え方について解説する。各地の知財総合支援相談窓口と併せ、ぜひ利用してほしい」(榎本吉孝センター長)と説明、呼び掛ける。

 例えば、コロナ感染が再び拡大している北海道は、道民や事業者へリスク回避要請がなされた。コロナ禍では接触に伴う需要は回避される。企業が生き残るには、早急にコロナ時代のニーズを踏まえた新事業を構想して、事業移行戦略を描き、それを実践することが必要になる。

 通常、企業は自社の強みを再認識した上に新事業や移行戦略を構想する。自社の技術力や特許、既存業種や製品のノウハウ、取引先などである。

 ガイドブックでは、これまでを起点に将来の新事業を描くだけではなく、これから目指す新事業を起点に現在を引き算する“バックキャスト”手法を提案する。業種転換が必要な場合、あきらめるのではなく、不足する技術、特許などを洗い出し、外部からのライセンスを検討することで移行戦略が描けるとしている。

 特許データベースを検索することで、誰がその技術を保有しているか、渉外対象のピックアップも可能だ。新規自社開発に挑戦するなら、特許や商標の獲得はもちん、契約による協業や標準化を進めることで、知財を活用したリスク対策を行い、事業防衛を図れる。事業移行戦略を知財戦略で支えられることを指摘している。

 ガイドブックは完成後、INPITの知財支援サイトである知財ポータル(https://chizai-portal.inpit.go.jp/)で公開されるほか、全国の知財総合支援窓口で活用される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)