カンボジアで全国規模で洪水 被災者多数 水田冠水や道路寸断も
カンボジア国内で集中豪雨による洪水の被害が広がっている。広い範囲で鉄砲水や家屋浸水などが発生しており、10月15日現在、全国で13人が死亡、20万人近くが被災し、約4万8000の世帯が被害を受けているという。
首都でごみ山積み
カンボジア政府や地元紙の報道が伝えた国家災害対策委員会のまとめによると、被害はバタンバン、バンテイミエンチェイなど北西部から、南はコンポンスプーやプレアシアヌーク、ベトナム国境のスバイリエンなど全国に広がり、25州のうち19州に及んでいる。被災者は19万3000人以上で、13人の死者のうち5人は子供だという。また、被災した4万8000世帯のうち3000世帯余りが現在も避難している状態だ。
農地や家畜への被害も大きく、全国で約13万9000ヘクタールの水田が冠水し、そのうち6600ヘクタールが壊滅状態になった。米作以外の農地では5万5000ヘクタール冠水した。浸水したり寸断したりした道路は全国13州内の199カ所、245キロに及び、国道2号、3号、4号など幹線道路の被災地区では、通行止めや大型車両の通行禁止が指示された。バンテイミエンチェイ州では、刑務所が被災する恐れがあるとして、収容されている囚人1000人余りをシエムレアプ州の刑務所に移動させる事態になった。
また、南部のコンポンスプー州では、チャムカーテダム(貯水容量500万立方メートル)の水門が崩壊。同州は、周辺に住む住民たちに警戒を呼びかけ、安全な避難場所を確保するように伝えた。カンダール州でもダムが決壊し、200世帯が避難した。
カンボジアは現在雨期の末期。この時期にはまとまった雨が降ることが多いが、今年は特に連日の豪雨に見舞われている。カンボジア政府は、10月後半も台風の接近による豪雨が予想されるとして警戒を呼びかけている。
一方、首都プノンペンでも12日の集中豪雨により、その後数日間に渡り洪水が発生した。家屋の浸水や道路の冠水で、1週間近くも交通がまひしている地区もある。また都内では、10月初めからごみ収集業者の従業員約2000人が待遇改善を求めてストライキを実施しており、歩道や道路にはみ出すほどのごみが山積みになっていた。ストは15日までには終わったが、ごみ収集は追い付かず、洪水でごみが流れだし衛生上懸念される状態になっている。
感染症発生など懸念
洪水被害に対する援助活動も始まっている。カンボジアのフン・セン首相は自身のフェイスブックページで、14日現在、353万5000ドル(約3億7223万円)の義援金が寄せられたことを明かした。国内最大の商業銀行アクレダ銀行をはじめとするカンボジア銀行協会から合計25万ドルが寄せられたほか、携帯電話サービスのセルカードは、被災した州の住民に対し、通話料無料と500メガバイトの無料データサービスを開始した。
カンボジア国内は、新型コロナウイルスの感染拡大は抑制されており、これまでの感染者は283人で、そのうち277人は回復、死者は出ていない。市中感染がほぼ確認されていないことから、政府は水際の防疫策に力を入れており、現在は医療崩壊も起きていない状態だ。しかし、連日の豪雨で気温が下がり、衛生環境が悪化するなか、新型コロナ以外の感染症や疾患も懸念され、政府は各地の行政担当者に対し、特に被災者の健康状態には注意するよう指示を出している。(カンボジア情報誌「プノン」編集長 木村文)