韓国世論がかき消す請求権協定順守の声 韓国国会議長も「弁解」

 
文喜相韓国国会議長(中央)=11月4日、参議院議員会館(佐藤徳昭撮影)

 【ソウル=名村隆寛】いわゆる徴用工訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた判決に対し、「1965年韓日請求権協定の尊重」を求めて日本側法律家との共同声明に名を連ねた朴仁煥(パク・インファン)弁護士は「日本に請求する前に、韓国側はやるべきことをやるべきだ」と訴えた。朴氏は「韓国は日本と結んだ協定を守り、国際条約違反の状態を是正すべきだ」と主張する。

 韓国では朴氏らのように、韓国最高裁判決が対日関係に及ぼす影響を懸念する法曹関係者は少なくない。だが、日本との歴史がからむと異論は許されないという現実もある。

 徴用工問題の解決に向け、文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が今月18日、国会に提出した法案への韓国社会の反応がそれを示している。日韓で寄付金を募り、元徴用工だと主張する韓国人に支給することで、被告となっている日本企業の資産の現金化を回避するための法案に対し、元徴用工らは日本企業の出資や日本側の謝罪が前提でないことに反発した。元徴用工の支援団体などは「加害者に免罪符を与える法案だ」などと批判した。

 反発を踏まえ、韓国大統領府高官は、賠償を命じられた日本企業が出資しなかった場合、「問題解決にならない可能性がある」と語った。「最重視してきたのは最高裁判決の尊重で、全被害者(元徴用工ら)が賠償される解決策が必要だ」とも述べている。

 法案提出者の文議長でさえ「最高裁判決の尊重を前提として可能な法案で、日本企業の責任が消滅するものではない」とホームページで説明した。歴史問題で日本への妥協を許さない世論に弁解しようという色合いがうかがえる。

 韓国政府は「被害者の意見が非常に重要」(大統領府高官)との立場で、問題解決に向けた動きは頓挫する可能性が高い。