【生かせ!知財ビジネス】特許情報、企業で生かせる場面多い
□イーパテント・野崎篤志社長に聞く
知財情報ベースの専門コンサルティング会社、イーパテント(東京都港区)の野崎篤志社長は、3月に2018年度特許情報普及活動功労者表彰(主催・日本特許情報機構)の特許庁長官賞を受賞した。同社はわずか起業2年だが、野崎社長は、知財業界で17年間の経験を持つ注目の知財情報コンサルタントだ。野崎氏に特許情報の普及、活用について聞いた。
--特許、実用新案、意匠、商標の産業財産権情報を知財情報と呼ぶ。特許の情報は企業戦略やイノベーションを分析するデータとして注目されている
「大手企業ではIPランドスケープ(経営戦略的観点を踏まえた特許情報分析)がはやっているが、知財部門だけでやっている面がある。ビジネス情報や企業情報ほど特許情報は浸透してはいないのが実情だ」
--普及には何が必要か
「特許情報の有用性に気づいてもらうこと。知財部門は経営層、新規事業開発部門やマーケティング部門など他部門ともっと交流し、そこにある課題を知り、仮説を想定し、何の目的で何を分析するかを明確にすることだ。コア技術を使った新事業、『GAFA』の影響分析など、特許情報が企業の各部門で生かせる場面は数多くある」
--知財部門に経営や事業に関する知見も必要では
「MBA(経営学修士)を取得したり異業種交流会に参加したりして磨くのもいい。知財の専門家だけが交流する領域から出て、属性の違う領域へ飛び込み、さまざまな課題を感知することだ。IPランドスケープの言葉だけが独り歩きし、とりあえず知財部門で分析報告書を作った、では意味がない」
--イーパテントの特許情報分析の特徴は
「決まった型にこだわらず、顧客ごと最適な分析方法を提案すること。そのため最初から特許情報分析には入らず、業界・事業環境分析から始める。特許が少ない業界や企業なら論文や企業情報など他の情報も使う。エクセルによる情報の定量分析、公報など諸文献の読み込みや業界構造分析での定性分析の組み合わせはよく用いる」
--今後の特許情報普及については
「わが社のモットーは“知財情報を組織の力に”だが、特許情報が企業全体に浸透するには時間が必要。企業の知財部門を日々サポートする活動を通じ、普及に貢献していきたい」(知財情報&戦略システム 中岡浩)
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