世界経済の悪化回避へ 問われる議長国日本の指導力
経済財政諮問会議で「国際経済の変動に強い経済構造の構築」が打ち出されたのは、米中貿易摩擦に端を発する世界経済の減速に強い危機感を抱いているからだ。減速が長引けば日本経済に悪影響がおよび、景気を腰折れさせることになりかねない。今年議長国を務める20カ国・地域(G20)会議などを活用し、世界経済の悪化回避へ向けた仕組み作りへのリーダーシップが問われている。
米中摩擦は中国経済へ悪影響を及ぼし始めている。2月の中国の対米輸出は226億ドル(約2兆5千億円)で、前年同月比29%減だった。対米輸出の減少は3カ月連続だ。
中国は国際的なバリューチェーン(事業連鎖)の中心にあり、輸出が停滞すれば世界経済に悪影響が広がる。諮問会議に示された民間議員の提言は、日本の景気にも「内需・外需の両面から影響を及ぼす可能性がある」と警告した。
米中貿易摩擦ではトランプ米大統領が経常収支の不均衡に強い不満を繰り返し表明。輸出から輸入を差し引いた「貿易収支」の赤字を是正して解決することを狙い、中国などの黒字国に高関税をかけている。
今年のG20の議長国である日本も「経常収支の不均衡」を優先議題とすることを表明している。ただし日本は高関税を発動する米国の保護主義にも歯止めをかけたい考え。トランプ政権が志向する2国間の貿易交渉ではなく、各国の経済活動に着目した多国間での解決を訴えている。
諮問会議の民間議員は「経済的な国際紛争を技術的、中立的視点で解決するルールと仕組みが紛争の歯止めとなる」と提言。日米欧の「三極」で、紛争解決の場としての役割を託されてきた世界貿易機関(WTO)改革などを進めるべきだとした。日本は米国を除く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を取りまとめた経験を生かしたい考えだ。(山口暢彦)
関連記事