GDP上振れも経済減速の兆し

 

 8日発表の平成30年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、設備投資の伸びなどで速報値から上方修正された。ただ、中身をみると、個人消費が下方修正されるといった不安要素も少なくない。今年1月の景気動向指数(一致指数)の基調判断では数カ月前の景気後退入りの可能性が指摘されており、昨年末に経済減速の兆しが表れていたことを裏付けている。

 個人消費について、改定値は速報値段階の基礎統計に昨年12月分を反映したことにより算出。年末の個人消費の下振れがマイナスに寄与した格好で、みずほ証券の末広徹シニアマーケットエコノミストは「世界経済の減速に対する不安感、消費税率引き上げが迫っていること、身近な商品の値上げが増えていることなどによって消費マインドは低下している」と指摘する。

 今回上方修正された設備投資をめぐっても「災害要因に伴う30年7~9月期の落ち込みからの回復という色合いが強い」(大和総研の小林俊介エコノミスト)との見方が出ている。

 ただ、足元は悪い材料ばかりではない。総務省が8日発表した今年1月の2人以上世帯の家計調査では、1世帯当たりの消費支出は29万6345円で、物価変動を除いた実質で前年同月比2・0%増と2カ月連続のプラス。消費の基調判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。内閣府が8日発表した2月の景気ウオッチャー調査でも街角の景気実感を示す現状判断指数が3カ月ぶりに改善した。

 今後、中国経済の減速が長引くとの観測が強まれば、個人消費や設備投資など内需が冷え込む可能性もある。31年1~3月期は景気後退が本格化するかどうかの境界線上にあるといえそうだ。(桑原雄尚)