中国の経済成長率目標引き下げ、日本に悪影響も

 
中国全人代に臨む習近平国家主席(手前左)と李克強首相=5日、北京の人民大会堂(共同)

 5日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代=国会)で、中国政府が今年の経済成長率目標を「6・0~6・5%」に引き下げた。中国経済の減速感が強まる中、懸念されるのはアジア全体への悪影響だ。中国での生産が低迷すれば、アジア各国・地域からの部品や機械の輸出が滞り、これらの国の成長は鈍化する。対アジア輸出が年40兆円を超える日本経済への打撃も避けられそうにない。

 「中国とアジアとの間には、強力なサプライチェーン(供給網)が築かれている。中国はアジア経済の牽引(けんいん)役だ」。農林中金総合研究所の南武志主席研究員はこう語り、中国経済の減速がアジア経済に悪影響を及ぼすと指摘する。

 すでに各国・地域の対中輸出額は減り始めており、財務省の貿易統計によると、日本の1月は前年同月比17%減の9581億円と1兆円の大台を割り込み、2カ月連続のマイナスとなった。半導体の輸出が多い韓国も1月は19%減、タイはIT製品向けの部品が低迷し、昨年12月が7%減だった。

 フィリピンなどほかのアジア各国も減少しており、台湾政府は今年1月の報告書で、「米中貿易の状況」「中国の経済成長の減速」に注視すべきだと警告している。

 懸念されるのは、「対中輸出の減少がアジア経済の低迷につながり、対アジア輸出が多い日本に悪影響が及ぶこと」(南氏)だ。

 日本からの2017年の輸出総額(78兆2865億円)のうち、アジア向け輸出額は55%の42兆9200億円。中国向け(14兆8897億円)を除いても、36%の28兆303億円に上った。主な輸出品は半導体、鉄鋼などだ。

 日本の対アジア輸出は足元で減り始めており、今年1月は13%減の2兆9109億円と3カ月連続でマイナスに。市場からは「中国経済減速の影響が及んできた」との声が出ている。輸出の減少が続けば、日本国内での企業の生産や設備投資が減り、業績不振や賃上げの鈍化、引いては消費低迷につながりうる。

 また、外務省によると、17年10月時点の日系企業のアジアの拠点数は5万2860で、全海外拠点数の7割。アジア経済の低迷は進出企業の業績不振につながり、設備投資や賃上げの下押し要因となる。中国を起点とする経済悪化の連鎖は想定以上に規模が大きく、戦後最長ペースで続く日本の景気回復基調にも水を差しかねない。(山口暢彦)