連結納税促進で競争力強化 利用は上場企業2割 簡素化へ

 

 親会社や子会社で構成する企業グループを一体とみなして法人税を課税する「連結納税制度」について、政府の税制調査会で事務手続きを簡素化する議論が進んでいる。企業の再編を促し、国際競争力を高めることを目的に平成14年度に導入された制度だが、手続きが複雑で、利用は上場企業の約2割にとどまっている。使いやすい制度へとてこ入れできるか-。(蕎麦谷里志)

 「連結納税によって分社化など企業再編がしやすくなり、加速度的に業績が良くなった」。2月14日に開かれた政府税調の専門家会合。日立製作所の担当者が、14年に制度を導入した効果をそう強調した。電機業界は2000年代に入ってから韓国や中国メーカーの台頭で競争が激化。しかし、日立は構造改革が後手に回ったことで、平成21年3月期決算では戦後最悪となる7873億円の最終赤字に追い込まれた。

 そこで、携帯電話やテレビなど不採算事業の撤退や統廃合を進めるなど企業再編を実施。4年後の25年3月期には、最終損益が1753億円の黒字に転換するまでにV字回復した。

 業績回復を後押ししたのが連結納税制度だったという。同制度は、国内にある親会社が100%子会社と孫会社の所得と損失を通算した上で、税務申告することを認めた制度。グループ内の黒字企業の所得から、赤字企業の損失を差し引き納税額を抑えられる。

 日立も同制度を活用し、24年3月期までの4年間は日立と100%子会社の法人税を納める必要がなくなり、手元に残った資金を「M&A(企業の合併・買収)の資金や研究開発に活用することで、国際競争力の強化につながった」(同担当者)という。

 制度設計で政府が重視したのが、企業再編を妨げない仕組みにすることだ。企業が業績を立て直す際、不採算部門を分社化すれば素早い意思決定が可能となり、大胆な改革もしやすいとされる。しかし、不採算部門を親会社が抱えていた方が税制上有利な従来の仕組みだと、税制が企業再編の足かせにもなりかねない。そこで、グループ一体での納税を認めることで、分社化の前後で比べた場合に、納税額が不利にならないように設計された。

 しかし、現状の連結納税制度はグループ内の1社でも申告内容を間違えれば、グループ全社の申告をやり直す必要があり、事務負担の大きさから導入が進んでいなかった。経団連の調査でも、制度を利用していない企業の78%が「事務負担が大きい」ことを理由に挙げたほか、導入済みの企業も94%が事務負担の増加を訴えていた。

 財務省は専門家会合で、申告に誤りがあった場合、ミスをした会社の修正だけで済むような仕組みとする改正案を示し大筋で合意が得られた。ただ、その場合、子会社の赤字を大きく見せて、グループ全体の納税額を減らすといった不正が横行する恐れもあり、制度の詳細な設計について今後詰める方針だ。