世界経済減速で不透明感 日銀、マイナス金利深掘りの観測も

 
記者会見する日銀の片岡剛士審議委員=27日、高松市(西村利也撮影)

 片岡氏が追加緩和を求めるのは、世界経済の先行きの不透明感が強まっているためだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が1月に追加利上げを一時停止する考えを示したことで、市場は米国の利下げまで見込み始めた。米ドル金利の低下、それに伴う円高の進行で輸出企業が打撃を受ければ、平成31年度後半にも日銀はマイナス金利の幅を広げるとの観測も出ている。

 「海外経済のリスクが及ぼす影響を十分に注意すべき踊り場の状態に移った」。片岡氏はこの日の講演や会見で世界経済の減速を指摘した。「金融緩和を強化し、需給ギャップの需要超過幅を拡大させるべきだ」とも述べ、追加緩和の必要性を繰り返した。

 米国発の貿易戦争や中国経済の不透明感が波及し、世界経済の減速感はここに来て際立っている。1月には国際通貨基金(IMF)が今年の世界経済見通しを下方修正。さらにFRBも利上げの一時停止の方向性を示し、欧州中央銀行(ECB)が金融緩和の縮小路線を見直す可能性も高まっている。

 日本は10月に消費税増税を控えている。政府が手厚い景気対策を実施するとはいえ、東京五輪需要の剥落も始まることを考えれば、デフレの長期化や景気鈍化を招きかねない。今のうちに長期金利を一層引き下げることで設備投資や賃上げを促し、物価上昇と景気拡大を後押しすべきだというのが片岡氏の考えだ。

 専門家の間でも日銀が追加緩和に踏み切ると予測する声も出始めている。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは今月公表のリポートで「31年度後半から32年度前半に日本経済の落ち込みが深刻化する可能性が高い」と分析。「31年度後半に日銀は10年国債利回りを押し下げ、金融緩和措置を講じる」と予測する。

 とはいえ日銀は国債購入によって長期金利を0%程度に誘導する政策を継続しており、景気てこ入れの政策余地は乏しい。長く続く低金利により利ざやが縮小した地域金融機関の経営が悪化する副作用も顕在化するなか、厳しい政策運営を迫られている。(西村利也)