就活ルール、進む形骸化 説明会1日解禁、内定時期前倒しも

 
会社説明会などの解禁を前にした2月下旬の業界研究イベントには前年を超える大学生の来場があった=東京都内(佐久間修志撮影)

 平成32年春卒業予定の大学生を対象にした就職・採用に関する会社説明会の開催などが1日に解禁され、企業の採用活動が本格化する。経団連の定める「採用選考に関する指針」が対象とする採用活動は今回で最後となるが、人手不足を背景とした学生優位の「売り手市場」に加え、改元に伴う大型連休もあって内定時期の前倒しが加速。就職・採用ルールの形骸化が進んでいる。

 東京都内で2月下旬に開かれた大学生対象の業界研究イベント。リクルートスーツ姿の学生が間仕切りブースで企業からの説明に熱心に耳を傾けていた。「出展企業は昨年比で1~2割増えた」と主催社。建設内装大手の人事担当者は「昨年までは何とか採用予定人数を確保したが、今年はかなり頑張らないと」と危機感を口にする。

 就職情報大手のディスコによると、今回の採用活動で採用人数を「増やす」とした企業は28・0%で「減らす」企業の7・9%を大幅に上回り、従業員1千人以上の企業では「増やす」企業が3割を超えた。採用活動の見通しについては、「非常に厳しくなる」と答えた企業が48・6%と、2年連続で前年を上回る。

 こうした中、加速するのが実質的な採用活動の早期化だ。同社の武井房子上席研究員は、学生向けインターンシップの実施企業が直近の数年間で急増、特に2月実施の割合が高い点を指摘した上で、「インターンが採用活動の一環として位置づけられており、IT企業などでは、選考の大詰めに入っている企業も少なくない」と実情を語る。

 調査では、今回の採用活動の重点項目について、2割近い企業が「3月より前のアプローチ」を挙げ、「4月下旬までに内定を出す」企業も半数を超えた。「大型連休を挟んで学生のモチベーションが落ちるのを危惧している」(武井氏)とみられ、東京都内の女子学生(21)は「もう内定が出ている友人もいるし、自分も面接をすでに2社受けている」と明かす。

 就職・採用活動のルールをめぐっては形骸化が指摘されており、経団連が昨年10月に指針廃止を決定。現在の大学2年生が対象となる33年春卒業予定者からは政府主導のルールに切り替わるが罰則規定はなく、経団連が会員企業に求めていた指針よりも“拘束力”の弱さが懸念されている。

 大和総研調査本部の宇野健司副部長は「各企業とも事業やサービスの多様化に伴い、業界を超えた人材獲得競争が進んでおり採用ニーズが高い。短期のインターンも実態は採用活動の一部となっており、経団連の指針廃止は採用ルールを守ろうという意識の最後のタガを外しかねない」と指摘している。