経常黒字7572億円 海外子会社で稼ぐも世界経済減速がリスク

 

 財務省が11日発表した平成30年11月の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支の黒字額は7572億円だった。輸出から輸入を差し引いた貿易収支の大幅な赤字を受けて前年同月比43.5%減少したが、53カ月連続の黒字は維持した。下支え要因となったのは国内企業の海外子会社からの配当金。日本企業の海外進出は活発化しており今後も増加が見込まれるが、米中貿易摩擦などの先行きが危ぶまれる中、海外経済の失速がリスクとなりそうだ。

 貿易収支は5591億円の赤字。輸出は1.9%増の6兆9180億円だったが、原油価格の上昇で輸入が13.5%増の7兆4772億円となり、輸出を大きく上回った。

 一方で、海外からの収益動向を示す第1次所得収支は、1兆4388億円の黒字で、前年同月比8.2%増え、貿易赤字を補った。好調な海外経済を追い風に日本企業の海外子会社の業績が上向き、配当金の受け取りが増えたことが主な要因だ。第1次所得収支の黒字額は17年に貿易黒字を上回ると、日本の“輸出で稼ぐ”という構図は大きく転換。特に近年は少子高齢化などで市場が頭打ちとなる中、国内企業の海外進出が加速している。

 調査会社レコフによると、30年に行われた国内企業による海外企業のM&A(企業の合併・買収)は777件で、前年比15.6%増加。26年以来、5年連続で最多を更新した。市場関係者は今後もこの傾向は続くと予想する。

 ただ、企業の海外進出が増えればそれだけ世界経済の影響も受けやすくなる。米中が貿易問題で対立する中では「これまで以上に世界経済の動向には注視が必要」(同関係者)となる。

 訪日外国人旅行者が国内で使う金額から、日本人が海外で支払う金額を差し引いた旅行収支も訪日客の増加で増えており、11月としては過去最高の1723億円の黒字となった。こちらも中国などの景気が冷え込めば訪日客は減少するとみられ、世界経済減速の影響は広範囲に及びそうだ。(蕎麦谷里志)