【専欄】家賃が高すぎる! 中国の不動産価格の異常な上昇率
“クレイジー!”な中国の不動産価格が、世界中で話題になって久しい。上昇率はまさに異常で、物件を見に行き、一晩考えているうちに、値上がりしてしまうというありさまだ。(ノンフィクション作家・青樹明子)
それは賃貸住宅も同様である。8月末に中国26の都市における家賃の値上がり幅が公表されたが、その数字が半端じゃない。前年同月比で、北京21.89%、上海16.46%、深セン29.68%、大連21.17%、成都30.98%…と、多くの中国人を震撼(しんかん)させている。
具体的には、北京のビジネス街・国貿地区で2LDKの家賃は、2015年に4500元(約7万4000円)だった。それが昨年は6600元となり、今年になって8000元ほどまで上がったという。
しかし北京のサラリーマン、平均月収は1万元ほどである。1万元からどうすれば8000元の家賃が出せるのだろう。かつては中国の常識だった職住近接などとんでもない。適正家賃を求めて、職場まで片道2時間も珍しくなく、車での通勤者は、毎日6時間は道路上にいるというケースもあるほどだ。
首都北京の賃貸住宅市場は物件数150万軒と、とてつもなく大きい。しかし賃貸人口は800万人である。10の企業が、今後2カ月のうちに12万の物件を新たに供給するというが、それでも足りない。
家賃のクレイジー価格は、若者たちに大きな影響を与えている。日本も同様だが、賃貸住宅に住むのは、若者が中心だ。北京では、賃貸住宅の3割が「90後」、1990年代生まれの若者たちだというデータもある。
改革開放のモデル都市、広東省深センは、住民の80%が地方から出稼ぎに来ている若者たちである。彼らは当然賃貸住宅に住むわけだが、収入のうち、家賃の占める割合が3割以上というのも珍しくない。
深センの工場労働者は、テレビの取材に対してこう答えている。「われわれはお金もうけのために農村から出てきている。月収が3000元で、家賃が1500元だったら意味がない。いったい、どうすればいいのか」
外国人も同じである。大企業の駐在員ならともかく、中小企業やフリーランスの外国人は、家賃の高騰で帰国を余儀なくされる例も多い。北京から日本人の数が減少しているというが、その理由は、家賃の高騰だという説もある。
賃貸人口は、2020年には2億2000万人、30年には2億6500万人に上るという。日本では江戸時代以降、米の供給不足による「米騒動」がしばしば起きている。「米寄こせ」ではなく「家寄こせ」という騒動にならなければいいがと切に思う。地方政府の手腕が問われている。
関連記事