政府、遺伝子治療の実用化を推進 研究支援や規制緩和
政府は、欧米でがんや難病の新しい治療薬として承認される例が相次いでいる遺伝子治療の開発を強化することを決めた。実用化が有望な研究や、次世代の技術と期待される「ゲノム編集」を使った薬の開発を優先的に支援。文部科学省が2019年度予算の概算要求に24億円を計上したほか、厚生労働省が研究をしやすくするための規制緩和も進めて、出遅れが指摘される日本の医療産業の巻き返しを図る。
遺伝子治療は、遺伝子疾患や重い病気の患者に対し、外部から遺伝子を導入する治療法。以前は安全性の問題が指摘されたが克服され、12年以降、白血病に対する画期的な効果で注目が集まる「CAR-T細胞療法」をはじめ、欧米でがんや難病の治療薬が少なくとも7種類承認された。米国では今後の4年間で約40品目が承認されるとの見方もある。
一方、日本では製薬会社による治験は少なく「研究への支援体制が脆弱(ぜいじゃく)」と指摘されていた。
文科省は遅れを取り戻すため、日本医療研究開発機構(AMED)を通じて、病気の治療のために正常な遺伝子を体内に運び込んだり、導入した遺伝子によって細胞の機能を高めたりする技術の研究を支援。遺伝子を自由に改変できるため、次世代の技術と期待されるゲノム編集を用いた研究も対象とする。
治療の際に遺伝子の運び役となる「ベクター」は、薬とは異なる製造技術や品質管理が求められることから、AMEDを中心に産業化に向けた基盤の整備も検討する。
厚労省は、治療に当たって必要になる環境影響評価などの法的手続きを簡略化するほか、臨床研究の得られた成果を薬事承認のための申請資料として使えるように規制を緩和。研究成果を迅速に実用化できるようにする。
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